Last Updated on 2024-10-04
前回に続き「VISIT JAPAN トラベル&MICEマート」(VJTM)における海外バイヤー(旅行会社)との商談についてお届けします。もちろん、VJTMに限らずこうした商談の場はありますから多くの点でそのノウハウは応用ができるでしょう。
商談と言っても単なるわがまち、わが社の紹介では実際の訪問や利用まで実行するにはいろいろな条件をクリアする必要があります。それをスムーズにするためにも先ずは「市場全体の流通」の姿を理解してから商談に臨むことが大切であることを前回お伝えしました。
今回は、実務的な準備(アポイントメントなど)の直前までに行う「プロダクトづくり」についてまとめておきましょう。
何度も重ね重ねになりますが「商談でバイヤーが買うものはプロダクト」です。つまり値札が付いた商品。
「我が町はこんなところなんです」と観光コンテンツを並べて説明するのも紹介として必要ですが、それは料理で言うとひとつひとつの「具材」。言わば生の野菜や肉、魚です。
バイヤーが求めているのはそれをうまく調理した「料理」。できればうまくまとまった「定食」になっていて、もちろん買えるように値段がつけられたものです。
海外の旅行会社や東京のランドオペレーターがそのまちの具材を自らが生産者などと交渉して仕入れて考えて調理して料理にして値札も付けて・・・とすることはまずありません。(旅行社によってはもちろんそれをしたカスタマイズツアーが売りとしているところもありますが)
つまり、あれこれと観光コンテンツを紹介するだけで「勝手に造成してコースに入れてくれるだろう」そう思っている自治体や協会、DMOは少なくありません。そのため、こうした商談会で「早速、具体的なコース設定に取りかかりましょう」ということが本当に少ないのです。
我々は成果を出すために商談会に参画するわけですから、やはり方策が必要です。
さて、そうしてバイヤーが買うことができるプロダクトにするにはそれなりの準備が必要なのは言うまでもありません。体験プログラムだとすればその中身、手順、予約管理、リスク対策、決済などプロダクトを実行する体制づくりこそがプログラムの中身と同じ程度に造成の手間暇がかかります。
つまり、1年がかりになるプロダクトもあるわけですから、今年の商談会が終わった時から来年のプロダクトづくりが始まっているということです。
これまでに海外バイヤーの何人かの外国人担当者は私に言いました「どこの地域もコンテンツがあることはわかるし関心もあるけれど、パッケージされておらず料金も決まっておらず我々は使いたくても使えないんだ」と。
つまりJust informationでしかないとうわけです。
我がまち自慢を熱心にすると、彼らも気が良い人が多いので「Sounds like good!」「It’s so nice!」を連発するわけです。彼らの精一杯の気遣い、優しさです。それを真に受けて「これは関心がありそうだ!手応えがあった!」と旅行ビジネスの商習慣がない自治体やDMO、新規参入の企業担当者はついつい思ってしまうわけです。
BtoBの商談会ですから目的はPR広報よりも実際の誘致につながるプロダクトを採用してもらうこと。そこを過去の商談を振り返り自己評価してみましょう。今後初めて参加しようという場合は正に準備に8割の労力を投入すべきです。
東アジアや東南アジアは、今や日本各地の空港や港にチャーター便などでダイレクトにやってきます。しかし欧米豪の玄関となるのは東京と大阪と限定的です。もし、商品ターゲットが欧米豪であれば、そもそもあなたのエリアに欧米豪が滞在や通過をするのか?から考える必要があるのは明らかです。(それすら考えていないセラーは実際にいます)
残念ながら日本の全てで欧米豪が市場として今すぐ訪問の可能性があるのか?となれば多くの場所でそれは時間がかかります。あなたの地域がまだまだ欧米豪市場の絶対数がないのであれば、こうしたBtoB商談の前の段階として、動きやすい個人旅客に関心を持ってもらいある程度の市場の地盤、そして、レビューを稼ぐことが先決でしょう。
もし京都や大阪、東京、金沢や広島など、比較的に欧米豪の流通が出来ている周辺都市(例えば陸路で1~2時間程度)であれば、こうしたBtoBグループの誘致にチャレンジすれば良いと思います。
そこで大事なのは「そこに行く価値感」を感じてもらえるかどうか?です。欧米豪市場にまだまだ知名度もないような場所ならば、「そこに多少の時間をかけて行っても満足を保障する」といった絶対的な自信があるプレゼンが必要です。
もちろん、それはハッタリではなく自信を持つプロダクトを造成しての話しであるのは言うまでもありません。
全く知名度がない(Kyotoですら世界的には知らない人はいっぱいいます)地域の場合、例えば1ヶ所だけ、1つだけの体験商品でオファーをしても彼らが検討するのは「そこに行くための距離と時間に比べた価値の有無」です。
もし設定した一ヶ所に不満足要素があると二ヶ所目がないとその日をカバーできず、旅行会社としてはツアー全体の印象を悪くしてしまいます。やはり、参加者の不満足をリカバーするためににも2ヶ所ぐらいの押さえが必要で、もし、2ヶ所ともGOOD!であれば結果として最高と考えます。(もちろん、それを高い確率で実現することを旅程を組む旅行会社は考えます)
では、一ヶ所でも良いのはどういったケースでしょうか?それは、あなたのまちが彼らがこれまで通常に訪問する場所への移動途中の立地であるようなケースでしょう。通常に訪問する場所というのは関西で言えばご承知の通り京都や奈良です。大阪市内のホテルに宿泊するグループに対しては、観光プログラムとして京都と奈良との行き来は普通に行うと考えられます。
もし、大阪市から京都や奈良の逆となる南や西、つまり和歌山や神戸方面となれば「わざわざ行く」必要があります。その場所に馴染みがないバイヤーも少なくなくありません。提案された地域やプロダクトの情報がWeb上にほとんどなく、更に口コミすらなければ、ある意味彼らにとってはギャンブルとなります。
よって、彼らが見て聞いて「なるほどそれは明らかに良さそうだ」と確信するようなセールストークの構成や、それを補助するビジュアルツールなどが必要となります。もちろん、何よりも地道なインバウンド受入れ実績とユーザーレビューがあるのがベストであり、日頃からのインバウンド対策がそこで効力を発揮します。
お気づきの通り、これが「大阪 ⇒ あなたの地域のプロダクト ⇒ 京都や奈良」という行程であれば、京都や奈良ではリカバーできる率が高いですから、提案するのが一ヶ所であっても途中立ち寄りのプログラムとしてチャンスがあります。私自身もこの提案で京都~奈良間の担当するDMO商品をオファーし成功しています。

海外バイヤーは最終決定者ではなく、当たり前ですがその先にスポンサーであるクライアントがいます。そのクライアントの窓口は、自身の責務として絶対にツアーを失敗できない立場の担当者がいます。このビジネスの経路を理解することが欧米豪セールスの大切なポイントです。
お気づきの通り、海外バイヤーとの間に国内のランドオペレーターの協力を得てビジネスを進行する場合は、ビジネスを成功させるためのハードルもう一段階があるということです。
海外の旅行会社も国内のランドオペレーターも個々が市場の独占企業ではありません。ビジネスとしてライバル社も多数あります。地域や企業といったサプライヤーはこれらの国内外の旅行会社がエンドユーザーに対して優れた行程、アクティビティの提案を可能にするための提案があということをある程度対等の立場でオファーすることが大切です。
旅行会社とサプライヤーの上下関係は昔は鮮明でしたがもう時代は変化し、相互依存の関係こそが今のスタイルだと確信します。
サプライヤーは「一緒に大切なお客様(エンドユーザーである海外のクライアント)の満足度を上げていきましょう」このスタンスこそが肝心であり、そのためには、しっかりと作り込まれ準備された品質高いプロダクトを用意する必要があるということになります。それにはたとえ1年でも時間を要することはいくらでもあるということが解ります。
こうして、あなたの地域にある素晴らしい旅行の具材(コンテンツ)を顧客ニーズを研究して料理し、見栄えもよく解りやすくセットし(パッケージにして)値段を付けて提示する。
この「プロダクト定食」こそ、開発やチェックなどに時間も労力も費用もかけられない国内外のバイヤー(旅行会社)に提供すべきかたちなのです。

次回は、いよいよ具体的な手続きや大切な商談相手のマッチングなどの技術面をお話ししていきましょう。

