Last Updated on 2024-10-04
前回の欧米豪市場に向けた体験プログラム編➀では、商談会である限り単に地域のコンテンツ(見学や体験施設やスポット)を並べても、なかなか海外の旅行会社や国内のランドオペレーターはわざわざ行程づくりまでしてくれることはないことをご説明しました。
料理に例えると、いくら地域でとれる新鮮で品質よい食材をいくつも並べても、レストラン側がそれを料理して定食にして値札を付けないと(プロダクト化)客がそれをつくることもなければ、食べることもしないということになります。
それは彼らが旅行という生身の人や天候などの自然に影響を受ける流動的な商品を造成するにはあまりにもその地域を知らず「何かあれば自身に成り代わって顧客のカバーを必ずしてくれる」という確信も持てないままに手を出せないという点が大きな理由です。
もう一つは、アフターコロナでインバウンド自体が押し寄せており、そのような作業の時間や労力が全くないという現状もあるでしょう。とにかく今は手離れ良い仕事しかできない状況だと考えます。
故に、地域や民間事業者がシェフとなり、地域の観光コンテンツをうまく料理して買いやすい定食(パッケージ)にしてあげる必要があります。
それら、インバウンド向けの体験プログラムの造成を行おうとする際、日本人向けとは異なる点で様々に注意すべきことがありますが、その細かな注意点などについてはまた改めて別の記事で体験プログラムのつくり方として書いていきたいと思います。
今回は、VISIT JAPAN トラベル&MICEマート(VJTM)の具体的な準備と商談で注意すべき点についてお話します。
VJTMは一般向けの展示博覧会とは違い、一般は入場できない完全なクローズドの場で行われるBtoB商談会です。つまり、バイヤーである海外の旅行会社とセラーであるあなた(観光行政や自治体、民間の様々な事業者)がプロダクトを売り買いするプロの商いの場であります。
これは当たり前のような話しなのですが、この認識がやや薄いと感じられるセラーは私が毎年見ている限り決して少なくありません。もちろん、地元のPRの場でもあるのですが、いくらPRに労力、時間を費やして充実感を得ても、地域の事業者らは来訪がなければ1円にもなりません。
商談とはビジネスの売り買いでありますからバイヤーはセラーから「仕入れ」るものを探しています。もちろん、これだけ多くの参加者ですと日本の知識を得るために若手を送る来るバイヤーももちろんゼロではありませんが、私の経験上、大半は権限があるプロダクト仕入のキーパーソンが参加しています。
さて、そうしたバイヤーが仕入れるプロダクトを最終的に買うのは誰でしょうか? そう、海外から訪日するエンドユーザーです。エンドユーザーは個人であったり、団体のオーガナイザーである法人であったり、どこかのサークルであったり、学校だったり様々です。
つまり、商談にあたってあなたの組織や会社が念頭に置くべき大切なことは下記の2点です。
➀ エンドユーザーの形態に合い、必ず喜んでもらえるという自信があるプロダクトをつくり、提供すること。
➁ このプロダクトを提供することで、バイヤーが顧客(エンドユーザー)に喜ばれ、信頼を築く事ができること。
ビジネスとして当たり前なのですが、バイヤーとセラーという関係である以上、バイヤーのビジネスに貢献できるプロダクトを提供することでバイヤーのビジネスが発展します。すると自ずとあなたのビジネスは継続し、拡大します。
これを、エンドユーザーの顔を想像せずに顧客をバイヤーだけにしていると、あなたの地域やビジネスをバイヤー売り込むことばかりに必死になりうまくはいきません。大切なのは「このプロダクトはあなたの顧客に必ず満足と感動を感じていただけるはずです」と、バイヤーと共に協力しあってエンドユーザーの訪日旅行の一時を演出するという、共にエンドユーザーを見つめる気持ちです。
私が海外の旅行会社や、もっと身近にビジネスをする国内のランドオペレーターの方々といい信頼関係を持てたのは、そういうスタンスを徹底すると、バイヤーにアドバイスをすることが増えたからです。販売するコンテンツについて自信があれば必ずバイヤーにとって安心でき、頼ることができるビジネスパートナーになれます。
よくホテルでも旅行会社に御用聞きのようなセールスを昔はしたものですが、そのような時代はもはや過去のもの、今はバイヤーのよりよいプロダクトづくりのパートナーになるべきです。旅行会社の敏腕で優秀な営業マンやサプライヤー担当の方は皆、それを熱心に聞いて具体的な商品づくりを実行してしまいます。
さて、下記は、よくインバウンド市場セミナーで使用する森田観光ビジネスサポートのオリジナルのインバウンド流通マップです。

VJTMで商談するのは多くが➁(一部、海外のランドオペレーターもあります)あなたは⑥となります。
VJTMは海外の旅行会社とサプライヤーが直接商談するわけですが、海外の旅行会社は日本の様々な地上手配を➃の国内ランドオペレーターと協業しているケースが多いです。
つまり、本来、どちらかと言えば体験プログラムなどのサプライヤーのプロダクトも➃の日本国内のランドオペレーターに提供するケースは多く、営業や集客、有事のカバーや決済まで、サプライヤーにとって非常に有りがたく頼りになり非常に有り難い存在です。
VJTMは海外の旅行会社との商談会ですが、実際に話してみて海外の旅行会社とのダイレクトなビジネスが難しいケースもあるでしょう。その場合は国内のランドオペレーターに相談するのがベストです。
もしランドオペレーターを経由してプロダクトを提供する場合は、ランドオペレーターの顧客に喜ばれ、信頼関係を気付いて頂けることを念頭に置かねばなりません。ランドオペレーターの顧客は誰でしょう? そう、チャート図の通りそれは海外の旅行会社です。
そして、前述した通り、我々インバウンドの業界仲間が最も気に掛け接遇すべきなのは、どのような流通経路を辿っても、言うまでもなくエンドユーザーであるのは言うまでもありません。
この仕組みをあなたの組織、会社のチームで一度確認しあいましょう。
何か考え方ばかりで恐縮でしたがいよいよ実務を見て行きましょう。
先ずターゲットの「エリア」を決めることがこの商談では準備の進行がスムーズです。ターゲットの「国・地域」ではなく、「エリア」です。具体的には➀「欧米豪」 ➁「東アジア」のどちらかでいいと思います。
もちろん、東南アジアもその地域に特に多いとか航空路線が就航しているとかあると思いますが東アジアの延長と考えればいいでしょう。もちろん、UAEやインド、南アフリカなど今後有望なエリアもありますが、こんなにもバイヤーがいる中ではメインに据えることもあまりないと思います。(特別なトピックスがある地域はメインにされるところもあるのでしょうが、一般的に)
ターゲットの国・地域は、以前サイトでも書いた通り、地域によって条件が異なります。つまり欧米豪が滞在することが多い主要都市そのもの(東京や京都や金沢や広島など)或いは、その都市と都市間の地方、または、その都市から1時間半程度で行けるようなエリアであれば欧米豪のグループなどは十分にターゲットとなります。
(今回、欧米豪を例にし、アジアについては別の機会で記していきたいと思います)
とは言っても、数が少ない地域もありますが欧米豪旅客はもちろん全国各地を訪問しています。東北や北海道、四国、九州、沖縄などは、欧米豪の主要路線が就航しておらず東京や関西から国内線での移動が必要ですが、地方への関心が高まる現在、是非、欧米豪誘致に向けて訴求して欲しいと思います。
具体的なプロダクトの話しになりにくいかもしれませんが、先ずは国内線に乗り換えたり、少し長いバス旅行て来てもらっても価値があるディスティネーションであることを凝縮した20分のプレゼンにしましょう。
20分がエリアの訴求に終わったとしても、この商談会で得たバイヤーリストは顧客リストとして今後「こんな体験プログラムができました!」と、いつでもメールでコンタクトが出来ます。
さて、話しをターゲットエリアを選定することに戻しますが、エリアを選定するメリットは何でしょうか?それは、前述したプロダクトを提案するためには大まかに分けた「欧米豪向け」と「東アジア向け」では内容が異なるためです。
その違いは様々ですが、例えば、BtoBの取引でさえ下記の項目などの相場感やハンドリングが異なってきます。
*価格
*案内言語
*興味、関心
*催行時間
*演出
*支払い
*販売予約管理(事前、当日、事後の連絡や時間の精度など)
その違いは経験を積まれたり、或いは私のような事情を知る者に聞かれるなどで把握し、ターゲットエリアに合ったプロダクトを設計しなければバイヤーが利用しにくいものになってしいます。
食事に例えると「ホロ酔いセット」を求めている人に「フルコースディナー」を薦めても量も時間も料金も理想とは違い食指が動きません。
とは言っても多ければ30社もアポを取ることもあるなかで、欧米豪の各国、もちろん、それで商談枠は埋まらずアジアももちろん商談していくわけですから、あくまでもアポイントメントの優先順位ぐらいに考えて、全ての国・地域に対して提案できそうな「プロダクトの種類」をある程度想定して準備しておくことが大切です。
例えば、私が自転車観光時代に明確に分けていたのは、欧米豪ならばガイドツアー、東アジアならばレンタサイクルと、価格の相場感や求めるものに分けてプロダクトを訴求していました。相手のエリアによって手を変え、品を変える。その一手間で仕事の効率を高めることができます。
ここで旅客の形態と書いたのは、あなたが提案したプロダクトは、大きく「グループ向け」か「FIT個人旅行向け」なのか?ということです。(細かく言えば例えばMICEにしても、それぞれでこちらがやるべきことが細かく違ってくるのですが、ここでは話しに切りが無く大きく考えましょう)
グループと言っても、10人ぐらいまでのスモールグループなのか、50名ぐらいまでで1バスのグループでも受け入れられるのか?によってもプロダクトで準備すべきことが変わってきます。もちろん、案内などの必要がない見学入場施設などは両方に対応することもできるでしょう。
案内や個々の席が必要な体験プログラムでは催行人数は限られていますから、ここでターゲットが異なってきます。
バイヤーの事前資料で大型MICEやスモールグループなど注力しているグループが書かれていたりすることがありますのでそれらを参考にしてアポイントメントを取っていく作業に移りましょう。
グループについては大まかに下記のどの形態に向けるのか?をターゲットして考えてみると良いでしょう。

F.I.T(Foreign Individual Tour)個人旅行については、欧米豪の場合、旅程の全てにおける様々な手配を含めたパッケージツアーを組み提供する海外の旅行会社も多く、交通、ホテル、食事といった基本的な部分以外に、体験プログラムや入場施設、同行ガイドなどの手配も行います。
こうした個人旅行を主体とする海外の旅行会社の場合は、行程そのものが東京、大阪での出入国が基本となり、長年あまり変わり映えしない行程が多いため、新しいディスティネーションには関心が高いです。
特に、現在の行程では都市部の滞在が多く、地方都市での自然や日本人の普段の暮らしに触れることができるようなローカル体験は非常に好まれ、地方都市には大いにチャンスがあるでしょう。地方については場所すらよく知られていないため、詳しいロケーションや滞在都市からの移動手段、滞在中の利便施設なども訴求することが大切です。
このように、ある程度のターゲットエリア、商談相手の嗜好やニーズを明確にしていくことで実りのあるプレゼンテーションのイメージが大きく沸いてきます。
お気づきの通り、これはプロダクトの発掘や開発を考えるととても短期でできることではなく、1年をかけてでも準備する必要もあるでしょう。しかし、それは何もVJTMだけではなく他のPRの機会や、ファムトリップなどにも大いに活用できるものであり、即ち、それはインバウンド市場に向けた基本的なBtoB対策を行うことになるということが大切
なポイントであり、あなたの地域や事業をPRする資産になるでしょう。
次回は、いよいよ準備の細かな実務についてお伝えしたいと思います。

