Last Updated on 2025-12-30
既に国内客向けの体験プログラムがある施設は、プログラムをそのまま外国人に提供されているところもあるでしょう。
アウトドアやスポーツ系など、日本人でも外国人でも説明内容が変わらないプログラムもありますが、訪日客に馴染みがない日本の歴史や文化、風習に関する体験は日本人との違いを考慮すべきこともあります。
そうした体験プログラムづくりのポイントを見ていきましょう。
陶芸や絵付け、和紙を使った小物づくり、座禅に写経、木工体験、料理体験、野菜や果物の収穫体験・・・日本人にとっては身近な文化も特に欧米豪の訪日客にとっては多くが異文化のものです。
誰もがそのモノづくりの面白さや難しさへの挑戦の気持ちや関心が参加動機だと思いますが、訪日客の場合、そこに日本を感じることが出来たり、日本だからこそ出来たりという「日本を体感したい」という国内客にはない動機が加わります。
特に文化体験などはそもそも国内客と訪日客の動機のスタート地点が違うわけです。つまり、それらの人たちに満足感を提供しようとする時、全く同じ手順や演出で両方を満足させることは難しいことがあります。
例えば日本らしい和紙を切り貼りし、お皿やペン立てなどをつくる小物づくり。日本人も子供から大人まで楽しめる手軽ありながら普段はできない楽しい体験です。
デジタルの時代となった今でも日本人にとって和紙は暮らしのどこかにある身近な素材であり子供でも見て、触れた経験があるでしょう。しかし外国人にとってはそうではないことを想像することが大切です。
日本人であれば、早速目の前に和紙を用意して、選び、好きな形にハサミで切って、貼り付けて・・・と、小物づくりそのものをスタートすればよいですが訪日客はその前にやっておきたいことがあります。
日本の文化としての「和紙そのものについて」、また、「この町と和紙との関係、歴史や産業の背景」など旅先の日本の土地を感じられるようなちょっとした説明です。
但し、このイントロで歴史博士のような解説は不要で「それは平安時代の頃・・・」とかではなく「今から何百年前に・・・」とザックリしたストーリーでよいことを忘れずに。
こうした歴史や文化の背景が理解できると、ただ手を動かすだけではなく日本の文化体験として大きく印象が違ってきます。それは体験後のレビューにつながるかもしれません。
その他、訪日客にも人気がある野菜の収穫体験などはどうでしょう? 例えばその土地で盛んに生産される理由に何か歴史的な背景があったり、土壌や気候が適しているということも多いでしょう。
以前、世界遺産 比叡山延暦寺のインバウンド向け体験プログラムの手順づくりをお手伝いする機会がありました。
お寺の代表的なプログラムはやはり「写経」と「座禅」です。話しは少し脱線しますが、昨今の体験コンテンツづくりの事業などは集客そのものより何かしら手の混んだことや、高付加価値とかで高い料金を付けることばかりが目的になっているようなことがあります。
そうした時、この「写経」と「座禅」などはそうした事業体の人からすればありきたりの体験であり、目的ではないようなことを言われることもあります。
ありふれた座禅や写経とかよりも「修験道を歩き、その昔を再現し・・・」の方がと。そこがインバウンド的視野ではないのです。私たちにとってありふれたものであることが目的にとって関係がないことはこの記事を読まれているあなたには既にお解りだと思います。
顧客視点、つまり訪日客の視点とマーケットインのマーケティングです。
インバウンドの事業は日本のソフトパワーを示すことも大切な目的ですが、根本は経済対策であり体験コンテンツづくりに必要なのは「集客」なのです。
それを考えた時、地域のマーケターがチョイスすべきは、その可能性や効果が高められる「写経」と「座禅」です。
欧米豪インバウンド客にとって日本の寺社自体は新鮮な場所でありスピリチュアルな場です。彼らはアジアの中でも日本人そのものに特別な不思議さを持っています。
つまり、それら日本人が信仰する対象として十分にスピリチュアルなのです。
その代表的なプログラムが写経と座禅であり、それらは恐らく仏と通じるシンプルでも奥深い意味合いがあるものでしょう。そのため世界遺産の寺院もそれを代表的で基本的なコンテンツとして位置付けられています。
それは特に欧州などの精神世界にも関心が高い人たちには深く理解してもらえるものだと思います。
スピリチャルな話しはさておいて、何よりも実売に対するマーケティングも理由です。海外の旅行会社やコンテンツ提案をするランドオペレーターなどはBtoB向けにも、個人客向けにもこの座禅と写経をエンドユーザーにオファーしています。
日本の寺院での特別な体験としてクライアント用のブローシュアーなどに大きく、価値高く写真付きで描いているものも実際見ています。
この2つの体験はようやく訪日客にも一般的に知られ関心を寄せる人は今後も増えているということです。
ここで「修験道をああして、こうして、、、」という日本人でもややこしそうな、こねくり回したような体験が訪日客に理解できるでしょうか?
何よりも説明自体が困難で販促媒体への反映も容易ではなさそうです。
お寺が持つシンプルで精神性や肉体的にも最も深いこれらの体験に体験商品としての価値があることや販売の可能性が最も近いという理由があることを知ることを関連する事業者は知るべきでしょう。
それがインバウンド誘致に必要な専門的なマーケティングであり、地方のインバウンド事業は、そうしたトータルで事業設計をすることが大変重要です。
しかし残念ながら推進組織である観光行政や受託会社、地元協議会などではそのマーケティングが十分ではないことを方々で見かけます。
さて、写経は一般的には般若心経。それはとても長く文字数も多いものですが、こちら比叡山延暦寺でのインバウンド向けの写経はそれとは違いました。
一般的な写経が200文字以上あるものがこちらでは16文字。これは「無常偈」(むじょうげ)と呼ばれる「諸行無常」の教えを4句で構成されたもので、4文字×4句=16文字です。
半紙にこの16文字がすかしで大きく入れられており、それぞれの句の意味が英語で書かれた紙が配られ説明されるというものです。
「世は常に変化し、生じて滅びて。消滅という変化がなくなる、つまり執着から離れるとそこに安らぎがある。」この教えは欧米豪の旅行者にもとても理解しやすいものでしょう。
そして、透かしに筆を入れる順番も書き順も筆さばきも自由で(何なら塗り絵のように塗ってもと言われていました)文字を書くことで仏とつながる、そうしたことが達成できればいいという何とも寛容な設えです。
「日本文化を知らない外国人の方にそんな難しいことを言っても仕方がない」その寛容さはさすがに日本仏教の母山と言われる比叡山延暦寺。宗教を問わず、世界中のインバウンドを受け入れる姿勢に私は感銘を受けました。
このように、文化的な体験プログラムは中にはそもそも外国人には難しく時間を要するものもあります。
地方のプログラムでは「この体験は完全にやってもらわないと意味が無い」と言われることもありそれも理解はできます。
しかし、訪日客はわざわざ日本を訪問してくれ、数多のプログラムの中から限られた時間で参加してくれているわけです。
やはり、国内客とは変えて、プログラムの内容を割愛し、工夫して時間を短縮し。「少し体験してみたい」という程度の方にも満足した時間を持ってもらえるようにしたいものです。
ゴルフでも時間がない時や、少しプレイしたいなと思った時はハーフラウンドでも、また、旅先ではクラブはハーフセットでもいいじゃないですか。
インバウンドの受入れは寛容さが大切です。Take it easy!
このようにプログラムの進行、手順が日本人向けとインバウンド向けでは大きく変わってくるものです。
従ってもしできれば体験内容によっては日本人と外国人の混載の場合は予め日本人客には「インバウンド客向けの説明で少しだけ時間を取らせて下さいね」などお願いしておけばいいでしょう。
また、体験の提供側によっては英語が話せない施設もあるでしょう。その場合、グループでもFITでもガイドの方など通訳者が同行していることを条件に受注することでもいいでしょう。
但し、注意すべきは通訳者を挟んだ場合、説明におよそ倍の時間を要することから説明を短めに想定しなければなりません。
説明は1センテンスをできるだけ短くしないと通訳が大変ですからそのコンビネーションも通訳者へ十分配慮する必要があります。
また、プログラムの導入部分の説明が充実していればその後の体験が非常にスムーズに進められることは多いものです。
その場合は冒頭に説明用のビデオを短く制作して観てもらうのもいいでしょう。
そこに体験の文化や地域的な背景も全て入れ込むことができれば一石二鳥。英語でテロップやナレーションを入れれば訪日客にもとても理解しやすいものです。
私は映像もプロの現場で働いていた経験がありますが、このようなビジネスで重要な役割を持つ映像制作はやはりプロに任せるのが良いと思います。
いくらアマチュアでも手作りで映像制作がしやすくなったとは言え、構成から撮影、編集、ナレーションまでが計算され、見やすく理解しやすい制作物ができます。
しっかりしたビデオを制作すれば、プログラムの印象も上がり全体の評価にも影響するでしょう。
更に、動画は他の媒体での活用をはじめ、重いデータでもストレージサイトなどを通じてメールで送信すればBtoBの営業などにも使え重宝します。

