Last Updated on 2024-10-04
「VISIT JAPAN トラベル&MICEマート」(VJTM)への参加のポイント。今回で最終回です。
これまで体験プログラムなど観光プロダクトづくりのために大切な「地域性」や「ターゲット」「旅客流通」などの考え方、そして、事実上の商談会の開始とも言える「バイヤーとのマッチング」(アポイントメントリクエストの送信と承認)について準備してきました。
最終回は会場での実務やツールについて押さえておきましょう。
海外バイヤーとの商談は最も多い日で1日14セッション(2023年実績)組まれており、1セッションの時間は20分です。
20分という時間は初めて出会う者同士の懇談時間とすればあっという間。20分あるというより、たった20分しかないということです。
冒頭の挨拶は名刺交換をしながらサッと済ませ単刀直入にプレゼンに入りましょう。ちょっと素っ気ないと感じるかもしれませんが相手はプロのバイヤー、スタートすればスイッチが入っており時間が貴重であることを承知しています。
近年、商談はバイヤーのブースに訪問して行う形式で、セラー参加者は基本2名となります。慣れない自治体や企業チェーンは3名、4名と押しかけているところを見受けますが、ブースや通路は狭く、名刺交換だけで不要な時間も取り(バイヤーの名刺枚数も考慮)バイヤーにとっても迷惑になりかねません。(多分迷惑です)
ちなみに私がクライアントの企業やDMOの商談にアドバイザーとして臨席する場合がありますが、自分で折りたたみイスを持ち運び、マーケットアドバイザーとしてバイヤーに紹介してもらい会釈のみで名刺も交換しません。商談を見守り「ここは!」という要所だけ突っ込んでセラーにアドバイスを一言実施する程度にしています。
例えばテレビの世界では15秒のCM、1分の報道、30分番組とそれぞれにタイムが刻まれた「構成台本」が書かれますが、20分しかない商談も同様にスムーズに進行するための「構成」が必要です。会話進行の設計図もなしに“出たとこ勝負”では時間は到底足りなくなるでしょう。
もちろん、放送とは違い、商談はその通りに行くことの方が少ないですから大まかな進行予定を準備すれば大丈夫です。話しの各セクションでの「トーク」と「使用ツール」を決め込んでおけば進行が安定しバイヤーにも安心感を与えられます。プレゼンター(英語)は本番前にしっかり練習しておきましょう。
構成づくりのポイントは、バイヤーとのビジネスやこちらのプロダクトを考えて「2つ、3つのパターンを考えておく」ことでバイヤーの商談ターゲットによって使い分けができます。「次のバイヤーはグループ利用に向けた体験プログラム用 2番目の構成で・・・」といった具合です。
★商談のメイン部分(プロダクト説明)の構成例
| 構成➀ 欧米豪向けのインセンティブやSIT等のグループ向けのプロダクトに絞った提案 |
| 構成➁ 欧米豪向けの個人パッケージに対してのオプショナルプランの提案 |
| 構成➂ 東アジアの個人旅行客に対するディスティネーションの紹介(モデルコースに掲載して欲しい!等) |
そして、全体の進行の構成は、上記のプロダクトの説明などを中心にして全体の20分を大まかに時間割りするイメージをしておきましょう。下記の例のように大体のイメージを持つことで話しの切り替えが上手にできます。
★全体進行の時間割り例
| 0~1分(1分間) | 挨拶、名刺交換(ついつい余談が・・・をなくす!) |
| 1~6分(5分間) | エリアや会社、団体の概要のみ説明 |
| 6~16分(10分間) | 体験プログラムなどのプロダクト提案 |
| 16分~20分(4分間) | 感想や質疑応答~今後のコンタクトなど(予備時間) |
これまでに記した通り、バイヤーの取り扱い商品などの詳細情報を事前にWebサイトや事務局からのバイヤー情報で掌握して臨むことが不要な時間をカットするために重要なことです。
セッションは会場アナウンスで「Session Close」と放送があり終了します。次のセッションまで10分間の休憩。バイヤーにとって貴重な休憩時間となりますので時間通りきっちりと終了することがマナーです。また、セッションスタートのアナウンス前にブースに押しかけることもマナー違反です。バイヤーの休息時間をじゃましないようにしましょう。
提示資料は事務局から「原則データ提供で」という通達があります。バイヤーからすれば数十の商談先が各々に紙資料での提供となれば荷物は大量。パンフレットやリーフレットをPDFなどにデータ化しUSBなどのメディアに納めて提供するようにしましょう。もちろん、2,3枚の少量の資料で事足りるなら受け取ってもらえるでしょう。
USB等のメディアでの提供以外では、商談内容の資料を会期後にサンキューメールと共にストーレージサイトなどからデータ送信する約束をするのも良いでしょう。少し落ち着いた頃に送ると、かえって印象が蘇るかもしれません。
そうしたオーソドックスな資料の他、非常に有効なのが動画でのプレゼンテーションです。これは特に体験プログラムの行程を実際の現場で順序よく構成したものなどで大変有効です。
時間尺は3~5分程度で、英語のナレーションを付けてもよいですし、商談会での説明用として、それを見ながら説明する形式でも良いでしょう。後者は臨機応変にシーンを早送りしたりストップさせたりして非常に有効に使用できます。ナレーションはなくとも後に見て理解できるように要所に説明テロップを挿入するのは有効で私もその形式で制作しています。再生はバイヤーブースで使用するためタブレットやノートPCでの再生となります。
尚、ナレーションなどを聞かせたい場合はヘッドホンを準備すべきです(会場はオープンでうるさい)
注意したいのは観光プロダクトの商談にふさわしくないあまりにも現実離れしたイメージビデオは使えないということです。近年、各自治体では映像技法やドローンなどを多用した少し現実離れしたまるで映画のような(実物がこんなに綺麗に見えるのか?といった)動画をよく見かけますが、その手の動画が現実の観光プロダクト選定に使えないことはプロであるバイヤーが一番よく知っており、もはや食傷気味と言えるでしょう。あなたの地域や会社にもあるかもしれません。
担当するDMOでは体験プログラムなどのプロダクト毎に動画を制作していますが、これはむしろ東京などの国内ランドオペレーターの担当者にとっても現場を理解する上で大変有効となります。YouTubeにUPしておけばURLをメールで送付するだけで相手方が簡単にアクセスできます。
動画制作については個人でも可能な時代となりましたが、やはりこうした重要なPR用ビデはプロのプロダクションに制作を依頼することを強くおすすめします。機材の問題というよりも撮影のカット割りから編集のセオリー、安定したマルチオーディオの処理などあらゆる技術が素人クリエイターとは圧倒的に違います。
これは私自身がこうしたプロモーション動画やTV放送など、映像制作に関わってきた者として言えることです。

| 広報PR用写真データの準備
地域や会社の観光プロダクトの広報用写真は出来る限り数多く準備すればバイヤー側での取り扱いの便宜を図ることができます。バイヤーもエンドユーザーや提携のリテーラーに観光商品を販売するわけですから観光ビジネスにおいては当たり前のことなのですが意外とそれらの写真素材が揃っていない地域や会社も少なくありません。
下記のような点に注意して準備しましょう。
*広報用写真として「何の写真、何のシーン」であるのか見てわかる被写体が明確な写真
*画角やピントなど基本品質が守られた写真
*最低限の基本レタッチ(明度や露出、彩度等の基本補正)が施された写真
*紙媒体にも使用可能な最低限のデータ容量がある写真(目安として最低でも1,2MB程度)
*各写真には何を示すものかをデータ名を英語で記載(出来れば一覧表にして何の写真かのキャプションを)
*データは基本jpgやpngなど汎用性ある形式で
*いかなる掲載も使用可能な著作権フリーであることの説明を加えること。(撮影場所等の許認可に注意)
*また、著作権はセラー(団体や会社)に帰属することの説明(必要であればクレジット挿入も)
以前に示した通り、特に欧米のバイヤーは日本国内のランドオペレーター経由でランド手配を行うことが非常に多いです。提案するあなたの地域や会社のプロダクトについても提携しているランドオペレーター経由で手配がなされる可能性も十分あります。そうした手配の流れを把握することも大切であり、バイヤーに聞けば多くの場合それを話してくれます。(東京の担当者の名前まで言ってくれるケースも少なくない)
そうした場合は、必ず、それらのランドオペレーターにも後日連絡し、そうした商談を実施した旨を伝え、プロダクトについても同様に説明、資料も提供することが大変重要です。
そのようなケースも想定して、国内ランドオペレーターへの手数料なども想定したアロワンスを持った料金設定をすることが望ましいでしょう。(やや高度なセールスセオリーとなりますが)
VJTMにおける海外バイヤーとの商談ノウハウについて4回に亘ってお届けしました。
これらのテクニックの中には他の商談会やファムトリップにおける地域での商談会などにも応用できることがたくさんありますので是非活用して下さい。
今回の最後にも記しましたが、やはり距離や時差や商習慣の違いがある海外バイヤーよりも、国内のランドオペレーターと協業する方が安心してビジネスを進行させることが出来ます。
今はこうした海外バイヤーとの商談機会も与えられていますが、インバウンドだからと言って海外と直接ビジネスをしなくてはならないということでもなく、可能であれば国内のランドオペレーターと協業することもおすすめします。
バイヤーとの多くの経験を持つランドオペレーターから観光ビジネスのスキルを深める知識を多く得ることができるとともに、何よりもランドオペレーターこそがあなたが決してリーチできない世界中の多くのバイヤーと数多くのビジネスをしているため必ずビジネスが拡大します。私はかつてアクティビティ会社にいたころは、ランドオペレーター各社のお陰で本当に多くのビジネスを獲得することができました。
ランドオペレーターの多くは東京や大阪に拠点がありますから、私自身、定期的に足を運び情報交換をしあいながら関係を深めることができます。もちろん、ランドオペレーターには、受入れ現地で得られたノウハウや情報をフィードバックする「お返し」が最も大切です。是非、良い関係を築き観光ビジネスを拡大して下さい。


